要員計画とは?現場の無理無駄を削減できる手段

要員計画とは、人員計画と呼ばれることもあり、貴重な経営資源であるヒトを効率的に採用し、配置し、異動させ、能力を開発するための計画であり、多くの企業において用いられています。
慢性的な人材不足、労働力の流動化が続く今日、ヒトに関するマネジメントの重要性は増しており、要員計画もより大切なものとなってきています。
この記事では要員計画の立て方のポイントをメインにご紹介していきますので、これからの参考にしてみてください。

要員計画で人事の無理無駄がなくなる

要員計画は事業計画を進めていくために必要な人材の確保や配置、不要な人員の整理などの計画であり、事業の成功や会社の方向性に大きな影響を与えるものです。
少子高齢化の進展の伴う働き手の不足、転職が当たり前となった今日、大切な経営資源であるヒトのマネジメントが行き当たりばったりであれば、思うように採用できないことに加え、自分のパフォーマンスを十分に発揮できる場所を得られていないことに不満を持つ従業員が離職してしまうなどの事態を引き起こしてしまいかねません。
その結果、会社組織としての生産性も低下し、思うような企業成長も難しくなってしまいます。

このような背景より、要員計画は会社のスムーズな事業展開のために必須の計画ですが、要員計画が定まっていることで人事の仕事にも無理や無駄がなくなるため、より効率的な仕事ができるようになります。
要員計画ではどの部署に何人必要であるかも明確となっており、その内容に沿って採用計画を組んだり、能力開発のための教育・研修を取り入れたりすることができます。いわば人事業務の中核となる計画なので、要員計画の有無および精度は人事の仕事にも大きな影響を及ぼします。

要員計画の立て方ー現状の調査

要員計画を立てるには、まず会社の現状を調査・把握することから始めます。
現状の調査・把握については、以下の3点に着目していきます。

事業計画を調査する

要員計画は事業計画に沿った内容である必要があるため、まずは事業計画を調査します。
その事業計画を達成するためにどれだけの人員が必要であると見込まれるのか、どのようなスキルを持つ人物が必要であるのか、などを把握するために事業計画を見ながら業務の棚卸を行います。
事業計画より必要となる人材の量と質の両方を汲み取ったら、人材の増減、配置、教育・研修などの各要素を取り入れながら要員計画を立ち上げていきます。

自社の人員構成を確認する

どのような人材が自社に在籍しており、それぞれがどの部署に所属していて、どのような業務を担っているのか把握しなければ、人材の増減や配置などを定める要員計画が曖昧なものとなってしまいます。
人員構成については事業計画からは読み取りづらいので、基本的に各部門の責任者を通じて人員の過不足を確認するとともに、労働生産性や直間比率について業界平均と比較しながら現状が適切であるかどうか計っていきます。

過去の採用データの確認

人員構成は過去に採用してきた従業員によって成り立っているため、過去の採用データの確認も行います。
要員計画ではどのくらいの人材を採用し、採用してからどのように育成していくのかも盛り込んでいくため、過去に採用した結果、現在どのようになっているのかを調査しなくてはなりません。

要員計画の立て方ー要員ニーズの把握

要員計画を立てるには、それぞれの部署にどれだけの要因ニーズがあるのかを反映させなくてはなりません。
要因ニーズを探るには基本的に各部署への聞き取り調査を行いますが。現場の要因ニーズだけでなく経営の要因ニーズもチェックする必要があります。

現場の要員ニーズ

現場の要因ニーズはミクロ的なニーズのことであり、欠員補充の要員ニーズ、ルーティン業務対応の要員ニーズ、残業や休日出勤などを要されている高負荷業務対応の要員ニーズ、高い専門性を持った要員ニーズなどが挙げられます。
いずれのニーズも具体性が高く、採用すべき人物も明確となりがちなので、要員計画にも反映させやすいのが特徴です。
要因ニーズを探るには現場の責任者へのヒアリングをはじめとする方法で行います。

経営の要員ニーズ

経営の要因ニーズは大き22種類に分けられます。
まずは事業計画や事業展開に伴う要因ニーズがあり、事業目標を達成するために何名ほどの人材が必要なのか、新規事業を展開するときに専門性を持つ人物が必要であるかどうかなどを探ります。
他方は、従業員の構成の要員ニーズであり、従業員の年齢の構成のバランスが悪い場合に生じるニーズです。
年齢構成のバランスが悪ければ、管理職のポストが不足するなどの課題の原因となり得ます。

採用人数を算出する方法

採用人数を算出するには、トップダウン方式、ボトムアップ方式、両者の併用型の3つが主な方法です。

トップダウン方式

トップダウン方式は、人件費にかける予算をもとに要員数を決めていきます。
予算内で採用人数を決められるので、計画立案もスピーディーに進められます。
最終的に予算内で予定していた人数を採用できたとしても、現状の人材不足が必ずしも解消されるとはいえないのがネックです。
予算内に抑えるという前提がある以上、採用できる人数にも自然と上限が設けられるため、要因ニーズのある部署に必要なだけの人数を割り当てられないケースも生じ得るためです。

ボトムアップ方式

ボトムアップ方式は、事業計画に要される業務量から必要となる人数を決めていくやり方です。
各部署の業務量、現在の従業員数、それぞれの従業員の能力なども把握して採用人数を算出しなくてはならないので、トップダウン方式に比べて時間がかかってしまいます。
ボトムアップ方式のメリットは各部署の要因ニーズが満たされやすい点ですが、十分なだけの人数を採用すると人件費が膨らんでしまいがちであり、予算を圧迫しかねないのがデメリットです。

2つの方式を使って算出する

トップダウン方式には予算内に人件費を抑えられるというメリットがあり、ボトムアップ方式には各部署の要員不足が解消されやすいという利点があります。
両者を組み合わせて算出すれば、予算と要因ニーズの充足の両面で納得しやすい採用人数を決定しやすくなります。

要員計画を適正にするための注意点

要員計画は事業計画にもとづいて策定した計画なので、安易に変更するべきではありません。
仮に変更が相次ぐようであれば、それは事業計画自体が頻繁に変更されているのと同じだからです。
要員計画を適正なものとするには、以下の2点について留意する必要があります。

要員実績と比較してギャップを確認する

要員計画が上手く機能していないように思ったときには、計画要員数と要員実績数のギャップを調査します。
ギャップを把握する際に参考となるのは、要員実績数を計画要員数で割った月次要員比率であり、この割合を追いながら年度で生じ得る人員の過不足を計ります。
その結果、不足する見通しであれば人員補充のための採用計を図るなどの対応を行います。
ギャップが明らかとなった場合には、すぐにアクションに移していくことが大切です。

配置した現場にヒアリングする

要員実績数と要員計画数を擦り合わせる際、並行して仕事量、要員のスキルや経験も加味しながら職種別要員計画を立てていくのもスムーズな要員計画の実現に効果を期待できます。
これらは現場でなければわからない情報も多いため、要員を配置した現場にヒアリングしながら情報を集めていきます。

まとめ

ヒトは事業展開のために欠かすことのできない経営資源であり、曖昧なマネジメントを行っていては業績に悪影響が出てしまいかねません。
事業計画に沿った要員計画を打ち立てることにより、ヒトのマネジメントの核ができあがるため、以降の人事の仕事はとてもスムーズになります。
要員計画と要員実績のギャップをチェックしながら、乖離が見られる場合にはすぐに採用を行うなどアクションを起こしていくことで、事業計画のスムーズな進捗を期待できるほか、中長期的な視点からも組織内の人員構成を調整できるなど、要員計画は多くのメリットをもたらしてくれます。
この機会に皆さまの会社でも要員計画を見直し、必要があればブラッシュアップしてみてはいかがでしょうか。