物事が上手くいっているかどうかは主観的にではなく、客観性ある指標を見ながら判断するのがビジネスをコントロールするための鉄則です。
最近、見聞きすることの多くなったKPIやKGIというマーケティング用語は目標に対しての成果を測るものであり、採用の目標管理においてもとても便利な指標となります。
以下では、KPIやKGIについて簡単に説明しながら、採用にどのようにそれら指標を活用していくのかご紹介していきます。
採用の目標設定方法
KGI(重要目標達成指標)とは最終目標が達成されているかどうかを示す指標であり、目標達成の時期と具体的な数字を設定したものです。
“経理部の人員増強を図る”というような曖昧なものではなく、“6カ月後までに経理部の人員を5名採用する”というように誰が見ても明確な指標である必要があります。
KPI(重要業績評価指標)とは、最終目標を達成するための過程を計測するものです。
最終目標までにはいくつもの過程を経なければなりませんが、それぞれの過程をどれくらいの状況で通過していくか管理することで、より最終目標を達成しやすくなります。
KPIもKGI同様に明確な指標である必要があり、それぞれの過程において達成可能な目標であること、最終目標と関連性が高い目標であることが重要です。
KPIを採用の過程に設置する場合には、面接設定率や内定承諾率といった数値目標を立てます。
KPIを用いることで、採用に携わるメンバー間で目標を共有できるようになるため、チームワークの向上も期待できます。
KGIとKPIを採用の目標設定に取り入れる場合には、まず最終目標となるKGIを設定し、その達成に必要な条件(KSF)を洗い出します。
そして、個々の条件をKPIに落とし込むとともに、採用に取り組むメンバーそれぞれの個人目標へと落とし込みます。
こうすることで、いつまでにどのような採用手順を踏んでいくのか、そのために個々が何をすべきかが明確となるので、採用成功までの適切なルートが浮かび上がってきます。
何を採用KGIに設定すべきか?
採用の最終目標を設定する場合には、人数と人材の質の両面から考えます。
採用人数をKGIとする場合には、今後の事業計画や経営目標を達成するために必要となる人員を想定するとともに、発生するだろう退職者の人数も取り入れながら要因計画を固めていきます。
人材の質をKGIとするのであれば、どの部署にどのようなスキルを持った人材が必要であるのか正確に把握しなければなりません。
人数を重視するのか、人材の質を重視するのかは、自社の状況より判断します。
絶対的に社内が人材不足であると判断できる場合には人数を重視すべきです。
一方、欠員の補充や、プロジェクトの進捗に必要な人員を求めている場合には質を重視します。
より効率的な採用活動とすることを考えれば、人材の質にこだわったほうが採用プロセスにかかる時間や手間も省略できるものの、今日のような深刻な人材不足の状況下では、なかなか採用できないままとなってしまいかねません。
採用担当者の都合で面接を回避するような採用活動となってしまえば、本来フィットするはずの人物まで会うことなく不採用としてしまいかねないので、質を重視する場合にもできるだけ面接するようにするのがおススメです。
応募書類から読み取れる情報だけでは採否決定のために十分な情報量であることは少なく、実際に会ってみないとわからない要素は多々あります。
このため、あるポジションの人材をピンポイントで採用したいというケースでない限り、まずは人数をKGIに設定しておくといいでしょう。
何を採用KPIに設定すべきか?
KGIが決まれば、その達成に向けて必要な過程を組み、KPIを設定していきますが、採用人数をKGIとした場合と、質をKGIとした場合とでは、設定するKPIが異なります。
人数を重視する場合には面接設定率と面接した人数からみた入社率を指標とします。
人数を重視する以上、書類選考通過率が高くなりますので、書類選考の結果のまま面接を組むだけでは面接担当者の負担が大きく、書類選考通過者全員と面接の日時調整するのも大変なので、面接設定率を高くなり過ぎないように決めておきます。
面接した人数からみた入社率は、育成型の面接を行えているかどうかの指標となります。
ターゲットを広くしているため、面接を通じて応募者本人に内定承諾させられるよう導かなくてはなりません。
このときに必要となるマネジメント力を測る指標が、面接した人数からみた入社率です。
採用する人材の質を重視するときには、面接設定率と内定承諾率を指標にします。
質を重視する場合には、書類選考の時点で応募者をかなり絞り込みますので、書類選考通過者全員と面接できるよう、面接設定率は100%に近い数字とすべきです。
内定承諾率は、内定を出した応募者が自社に入社を決める割合です。
質を重視して内定を出した応募者は優秀な人材であることが多く、そういった人材ほど他社も欲しがるものです。
このため、いかに自社に入社を決意させることができたかを示す内定承諾率はとても重要な指標となります。
採用KPIを利用して目標達成に導くポイント
KPIを設定しても、状況によっては事前に思い描いた通りの進捗とならない場合もあります。
そのようなときはKPIを見直し、必要に応じて修正や変更を加えるなど、柔軟な運用を行います。
このため、KPIの運用については常にPDCAを意識していなくてはなりません。
実現可能だろうと思って設定したKPIが達成されているかどうか、達成されていないのであれば何が原因でどのような改善を図るべきなのか、PDCAを回していくことでKPIの精度がより高いものとなります。
この際、注意しなければならないのは、KPIをいくつも追加しないようにする点です。
あまりにKPIの項目が多くなってしまうと、採用担当者が追加項目についての報告にも時間を取られるようになるなど負担ばかりが大きくなり、モチベーションの低下を招きかねません。
KGIを達成するために、歩留まりの数値管理を行うのも有効です。
採用プロセスそれぞれに、どれくらいの人数を進めるのか決めておくことで、採用の予算や手段を決めるための材料となるため、採用活動がとてもスムーズになります。
書類選考を通過して面接に進む人数、面接を経て内定を出す人数、内定を承諾して入社する人数といった具合に数値目標を立てておけば、採用に携わるメンバー間でも目標達成状況を共有できるようになります。
これまで中途採用をしたことがなく、プロセスごとにどれだけの人数設定を行えばいいのか迷う場合には他社を参考にしたり、転職エージェントに相談したりするなどしてみるのがおススメです。
採用KPIの管理方法
採用プロセスごとの達成状況を客観的に見ることのできるKPIを適切に運用するためには、KPIを適切に管理しなければなりません。
採用に携わるメンバーが共有することで、よりスムーズな採用活動が展開できるようになるため、エクセルやスプレッドシートを利用してKPIを管理・共有するのがおススメです。
また、KPIを管理するためのツールやアプリもリリースされているので、それらを利用するのもいいでしょう。
KPI管理ツールは、慌ただしいスケジュールに追われがちな採用担当者の手間を省き、メンバー間で情報を共有しやすく設計されているものが多いので、とても便利です。
KPIを適切に管理することができれば、より戦略的な採用活動に専念できます。
まとめ
いくら売り手市場であるとはいえ、ビジネスを成長させていくためには、それを動かしていく要員を確保しなければなりません。
採用活動にKGI、KPIを導入することで、どのような採用戦略を展開していけばいいのかも明確になるため、人数、人材の質、のいずれを重視しようとも、適切な採用活動をスムーズに行いやすくなります。
どちらも数値による客観性ある指標なので、採用担当者間での目標の共有とチームワークの向上につながるのも、KGI、KPIのメリットです。
はじめてこれら指標の導入を採用に取り入れようとすれば、特にKPIの設定が難しく思えるかもしれませんが、そのようなときには転職エージェントに相談すれば、採用プロセスそれぞれについての、歩留まりの数値の目安についてアドバイスを受けられますので、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。