圧迫面接に潜む内定辞退のリスク…面接官の行動チェックと改善法

選考段階における面接で圧迫面接が行われるケースもありますが、そのような面接を受けた場合、内定を得られたのに辞退してしまう応募者も少なくありません。
自社の求める採用基準をクリアしている人物を確保するためにも、できるだけ圧迫面接と受け取られないよう面接官は留意する必要があります。
この記事では圧迫面接について理解を深めていくとともに、面接官がどのような点に気をつけるべきなのか紹介していきますので、今後の参考にしてください。

圧迫面接はリスクが大きい

圧迫面接とは、選考プロセスで実施する面接において、面接官が応募者に対してあえて威圧的な態度を取ってみたり、意地悪な質問を投げかけてみたり、応募者の話をあまり聞いていないような態度を取ってみたりする面接のことをいいます。

この目的はストレスへの耐性を見極めるためであり、応募者が自分にとって好ましくない状況下でどのような受け答えを行うのか観察します。
その他、コミュニケーション能力を計ったり、応募者の本音を引き出したり、追い込まれた状況下でどれだけの思考力を発揮できるのか見極めたり、といった情報を引き出せるのも圧迫面接の魅力であり、実際にこれまで多くの企業で導入されてきた面接手法です。
日本のみならず海外でも圧迫面接は行われており、海外ではストレスインタビューと呼ばれています。

しかし、コンプライアンスの高まり、価値観の多様化によって、徐々に圧迫面接を行う企業は減少してきています。
ネットやSNSで誰もが情報発信を気軽に行えるようになった今日、圧迫面接の実施には大きなリスクがつきまといます。
圧迫面接による面接官の対応は応募者にとって愉快なものであるはずがなく、下手をすれば応募者の心証を害してしまう可能性も十分に考えられます。
その結果、ネットやSNSに自社が圧迫面接を行っていると拡散されてしまえば、以降の採用活動に支障をきたすことになるかもしれません。
このような背景より、面接官は無意識のうちに圧迫面接を行っていないかどうか自身の対応をチェックする必要があります。

圧迫面接されると志望度が下がる

圧迫面接を受けて、その企業により就職したいと思う応募者が少ないだろうことは誰もがイメージに容易でしょう。
面接は本来、求人をかけた企業とその選考に参加する応募者とのあいだで円滑なコミュニケーションを交わし、相互に知りたい情報や確認したい事項を得るための場のはずですが、圧迫面接はいわば円滑なコミュニケーションを阻害する対応を面接官が行うのですから、応募者にとって満足できる時間となるはずがありません。

面接は企業が応募者の資質を見極めるだけの場ではなく、応募者もどのような企業であるのか見極めるための場なので、応募者が自分にとって有意義であると言い難い時間を過ごしたと評価した場合、その企業に就職したいと思う志望度はどうしても下がってしまいます。
このことは自分が応募者の立場になって考えてみると、よりわかりやすくなります。
“一生懸命に自己アピールしたいのに、面接官がまともに話を聞いてくれていない”、“終始、不機嫌そうな表情で対応されるばかりだった”、“大人であるはずなのに態度がとても横柄であり、上から目線で対応された”、といった圧迫面接を受ければ、誰だって不快な想いになってしまいます。
すぐに情報発信できる今日、これらのような面接でのやり取りを拡散されれば、その内容をチェックした他の応募者の志望度にも悪影響を及ぼすほか、これから選考に参加しようと思っていた求職者も選考への参加を敬遠するようになってしまうと考えられます。

圧迫面接になっていないかチェックしよう

圧迫面接とされるケースは多々ありますが、圧迫面接であるかどうか決定づけるのは、その面接を受けた応募者の主観がどのように判断するかが大きく関わってきます。
面接官が意図的に圧迫面接を行う場合がある一方、無意識に行ってしまっている場合もあるので、以下を参考に自社の面接が圧迫面接となっていないかどうかチェックしてみてください。

面接官の態度が威圧的

面接官が威圧的な態度であると受け止められれば、その面接が圧迫面接であったと評価されやすくなります。
腕や脚を組んでいたり、ふんぞり返って座っていたり、必要以上に応募者をじっと見つめていたり、大きすぎる声で言葉を投げかけたり、といった対応が威圧的な態度と思われやすい例です。
常識的に考えて、初対面の大人同士のあいだでこのような対応を行うのはあり得ないことであり、威圧的で横柄であると受け取られるほか、応募者によっては怖い印象を持ってしまいかねませんので、後を考えると企業にとってメリットのない対応であるといえます。

この結果、応募者に身構えさせてしまい、本来の姿を引き出しづらくなるなど、圧迫面接で狙うはずのメリットも引き出せないままとなってしまいます。
応募者は緊張状態にあること、企業と応募者は対等に接すべきであることを意識すれば、自ずとこれらの態度は改善されやすくなります。

「なぜ?」「どうして?」と何度も繰り返す

応募者の本心を引き出そうとするあまり、質問事項への回答について「なぜ?」、「どうして?」と何度も繰り返してしまう面接も圧迫面接であると受け取られがちです。
応募者からすると詰問されているように思えたり、自分の回答を否定されたりしているような気になってしまいますので、円滑なコミュニケーションの阻害要因となってしまいます。
単純に「なぜ?」「どうして?」と繰り返すのではなく、回答の内容を引用しつつ「○○の理由はなんですか?」、「そのように行動した背景を教えてください」というよう具体的な質問とすれば、応募者も“自分の話をしっかり聞いてもらえている”を思うようになり、より円滑な面接の実現に近付けます。

求職者の発言を否定する

求職者の発言への否定が目立っても圧迫面接と受け止められます。
「本当にうちに入りたいんですか?」と志望動機を否定したり、「それは強みとはいえないのでは?」と経歴を否定したり、「もっと自分をアピールしてください」と自己PRを否定したりすれば、応募者は気分を損ねますし、それ以上どうしたらいいのかわからず不安を覚えてしまいかねません。

初めて会う社会人同士、対等の者同士としてあるべきコミュニケーションを意識すれば、自ずとナチュラルな応対をしやすくなります。
応募者から引き出したい情報をなかなか得られないのは応募者に問題があるだけでなく、それを引き出せない面接官のコミュニケーションスキルにも問題があることを意識すべきです。

求職者を侮辱する

誰しも自分が侮辱されて心地良い想いをするはずがありません。
初対面の者同士のコミュニケーションのみならず、普段から付き合いのある者同士でのコミュニケーションにおいても相手を侮辱すべきでないのを考えれば明らかであり、応募者の発言を否定する以上にネガティブな印象を与えてしまいます。
学歴や職歴、性別や出生地などを否定されれば、応募者にとって自らを否定されるようなものです。
厚生労働省が公開している、採用のためのチェックポイントとしての「公正な採用選考の基本」にも触れるべきでない事項が紹介されているので、面接を担当する前に目を通してみるのがおススメです。
侮辱内容がSNSで拡散されてしまえば、取り返しのつかない問題にも発展しかねません。

まとめ

圧迫面接は応募書類からでは読み取りづらい応募者の姿を引き出すのに効果を期待できる面接手法であったかもしれませんが、今日においてはもう時代遅れのものと言わざるを得ません。
ちょっとしたことでもネットやSNSで拡散され、その内容によっては自社へのバッシングが生まれてしまいかねないのを考えても、圧迫面接は行うべきではありません。

注意しなければならないのは、自社の面接が無意識のうちに圧迫面接となってしまっていないかどうかです。
威圧的な態度を取っていないかどうか、応募者の発言をむやみに否定していないかどうか、応募者を侮辱していないかどうかなど、定期的に面接内容を振り返りながら、自社の面接をブラッシュアップしてみてはいかがでしょうか。