ダイバーシティ(多様性)を受け入れながら、より優秀な人材を確保しようと思ったとき、どうしてもネックとなってしまうのが主観です。
多様性を眺める主観は公正な採用活動を阻害する要因となってしまいかねません。
そこで注目されているのがブラインド採用という手法です。
一億人総活躍社会の実現を目指す働き方改革が提唱される今日にフィットする採用活動のために効果を期待できるブラインド採用について、この記事にて紹介していきます。
ブラインド採用とは
ブラインド採用とは、名前、性別、年齢、学歴、本籍などの個人情報を取り除き、能力のみで応募者を評価・採用する採用手法です。
ブラインド採用を行うことで、求人への応募者を評価する担当者自身が気づいていない偏見をできるだけ除外することにより、本当に自社が必要としている能力を持った人材を選抜して採用しやすくなります。
もちろん応募者を評価する担当者も偏見を持たないよう心がけているものですが、多様性を受け入れるにあたって、どうしても主観が働いてしまいますので、無意識のうちに採用の公正さを失ってしまいかねません。
そういったリスクをできる限り排除するために効果を期待できるのが、ブラインド採用です。
ブラインド採用が広がった背景
ブラインド採用が広がった理由は日本と海外とで異なっており、日本より先に海外で導入されるようになりました。
海外が先にブラインド採用に着目したのは、公正な採用活動を図るにあたって人種への偏見が大きな阻害要因となっていたためです。
1970年代から1980年代にかけて、ある交響楽団のメンバー構成がほとんど白人男性で占められていたことに対する問題提起がブラインド採用を誕生させました。
これにより人種差別、男女差別を撤廃した採用活動への取り組みが始まったのです。
日本でブラインド採用が注目されるようになったのは近年のことです。
少子高齢化の進展に伴って労働力が不足するようになり、それまでの採用基準を変更しなければ十分な労働力を確保しづらくなったため、多様性を受け入れざるを得なくなりました。
その人物が持つ多様性を受け入れるか否かは、選考における評価担当者の主観によってどうしても左右されがちであり、その課題解決のためにブラインド採用はピッタリの採用手法です。
加えて、働き方改革に伴いダイバーシティの受け入れを多くの企業が意識したのもブラインド採用拡大の追い風となりました。
政府が一億人総活躍社会の実現を推進している以上、社会からも多様性を受け入れるよう要求されます。
そういったニーズに応えつつ優秀な人材を選抜するにあたり、能力のみで公正な採用を実現できるブラインド採用はとても大きな魅力を持つ採用手法だったのです。
ブラインド採用を導入するメリット
ブラインド採用を導入することで得られるメリットは大きく分けて4つあります。
まずは、公平な採用を実現できる点です。
ブラインド採用はその求職者がどのようなスキルを持っているのかという点に強く着目して採否を決定しますので、これまで学歴や性別、年齢などの要件によって採用対象とならなかった人物も公平に評価できるようになるためです。
この結果、実力主義の採用を実現できるとともに、有能な人材を見逃すリスクも軽減できるようになります。
二つ目のメリットは、優秀な人材を採用しやすいという点です。
公平な採否判断を行うための基準となるのが求職者の持つスキルなので、本当に自社が必要とするスキルを持つ人物を選びやすいのがブラインド採用の魅力に他なりません。
“なんとなく”の採否判断を撤廃できるようになるため、より戦略性の高い採用を実現しやすくなります。
3つ目のメリットとして挙げられるのが、多様性ある人材が社内に集うことで新たなアイデアが生まれやすい環境づくりにつながる点です。
厳格に定められた採用基準を順守して採用した場合、同じような価値観の従業員ばかりが集まってしまう可能性が高まります。
こういったケースの場合、社内で出されるアイデアも画一的になりがちであり、企業成長を阻害する要因となってしまいかねません。
しかし、ブラインド採用によって多様性ある従業員が集まれば、これまで社内に存在していなかった新たな価値観による斬新なアイデアが生まれやすくなります。
最後に、多様な社会のニーズに対応しやすくなるというメリットが挙げられます。
企業が多様性を受け入れなければならない背景には、そもそも社会を構成する人々の多様化があり、これからの時代、企業はそれらの多様性に応えながら商品やサービスを提供していかなくてはなりません。
ブラインド採用によって得られる従業員の多様化とスキルの高さは、これまで社内になかった付加価値の創出に役立つと期待できます。
ブラインド採用を導入するデメリット
ブラインド採用は応募者のスキルを重視して採否を判断するため、採用者を性別や年齢で分けてみた場合にバランスがうまく取れていないことに気付かされるケースも少なくありません。
自社の雰囲気に合う人物であるかどうかを判断基準とできないため、従来のように会社のイメージに合う従業員だけを揃えることはとても困難になります。
また、ブラインド採用で採用した従業員と、もとから働いている従業員との間で摩擦が生じ、何かしらのトラブルへと発展してしまう可能性もあります。
例えば、社風や調和を大切にしている環境に、それらに縛られない様々な価値観を持った人物が入ってくれば、それぞれの考え方がぶつかり合ってしまうためです。
従業員間でのトラブルが生じれば、せっかくスキルを重視して採用したにも関わらず、期待通りのパフォーマンスが発揮されないばかりか、早期離職も生じさせかねないため、お互いの考えを尊重し合うようフォローしなくてはなりません。
また、ブラインド採用は性別や年齢、学歴といったフィルターを用いないので採用対象となる応募者が増えるほか、提出書類を精査しなくてはならないので、選考に時間がかかりがちとなるのもデメリットです。
ブラインド採用の方法
ブラインド採用は、選考過程において名前や性別、年齢、学歴といった個人情報を取り除き、能力のみで選考していくため、採用担当者がこれらの個人情報を知り得ないように工夫する必要があります。
例えば、採用担当者と事務処理の担当者を分け、採用担当者には個人情報を削除した資料を渡す方法があります。また、応募書類に譲れない価値観や考え方を記載してもらうなど、目には見えづらい応募者の情報を記載してもらうのもおススメです。
個人情報ではない部分の項目をいくつか設けることによって、より自社にフィットしやすい人物の採用につながりやすくなるためです。
ブラインド採用はダイバーシティの受け入れに効果を期待できますが、留意しなくてはならないのが、ダイバーシティを受け入れるための従業員の意識改革や社内環境の改善です。
ブラインド採用によって採用した新しい従業員が自社に馴染めなければ早期離職へとつながってしまいかねないほか、既存従業員のモチベーション低下や流出などを招きかねません。
ブラインド採用を導入するにあたっては、ダイバーシティを受け入れられる組織づくりにも取り組むとともに、採用後のフォローも大切な仕事となってきます。
まとめ
ブラインド採用はダイバーシティへの対応を要される企業にとって魅力ある採用手法ですが、導入したからといって、ダイバーシティの受け入れについてすべてが解決するわけではありません。
欧米に比べて遅れているダイバーシティへの対応について、いくらかの遅れを取り戻せるものであり、公正な競争の場を創り上げられるものであり、一人ずつ採用していくことによって中長期的にダイバーシティに対応した組織づくりを可能としてくれるのがブラインド採用です。
やみくもにブラインド採用を導入するだけでは、これまでの従業員と新しく採用する従業員の間に溝が生じ、組織としての生産性低下を招きかねないので、まずは一歩ずつ進めていってみてはいかがでしょうか。