バッググラウンドチェックとリファランスチェックの違いは?

中途採用では応募者から提出された履歴書や職務経歴書、面接時に受け答えする情報をもとに採否を決めますが、場合によってはバッググラウンドチェックやリファランスチェックを行い、応募者が提供した情報が真実であるかどうかの裏付けを取ります。
“採用されたい”と考えている応募者が採用を検討している企業側に必ずしも真実だけを言っているとは限らないため、これらの過程を経ることで、安心して採用できる人物であると判断できるようになります。

バックグラウンドチェックとは

バックグラウンドチェックとは、選考に参加している応募者から提供された経歴に関する情報が真実であるとの裏付けを取るための調査です。
書類選考や面接において応募者が提示する情報が真実であるかどうかは応募者本人にしかわかりません。
場合によっては、虚偽の経歴を語っていることもあり、そのような人物を採用してしまえば、後々の会社の不利益につながってしまいます。
こういった事態を避けるために、応募書類の記載内容を証明できる他の書類の提示を求めたり、事実を知っているだろう人物にコンタクトを取ってヒアリングしたりします。

バックグラウンドチェックはこれまで日本では広く行われてきませんでしたが、欧米では一般的なものでした。
しかし、転職が当たり前のものとなり、雇用のあり方も多様化した今日、応募者の経歴が確かなものであるかどうか知ってから採用したいと考える企業が増えてきたので、日本でもバックグラウンドチェックが徐々に浸透してきています。

一旦、採用したら簡単に解雇できないリスクも、チェックが行われるようになった理由のひとつです。
かつては役員クラスのポジションを担う応募者、金融機関に転職しようとする応募者などに限定して調査されていましたが、近年は一般的な求人への応募者にもチェックを行うようになっています。
実際にバックグラウンドチェックを行うのは企業の担当者ではなく、企業から委託を受けた調査会社が行うのが主流です。

バッググラウンドチェックの調査内容

バックグラウンドチェックでは、経歴が確かであるか、会社に不利益を与える可能性のある人物ではないか、などをチェックします。

まずは学歴です。
応募書類に記載されている学校へ実際に通っていたのかどうか、入学や卒業の年度に誤りがないかどうか、などを確認するために、卒業証書の提示を求めたり、学校へ連絡して在籍の事実を確認したりします。
職歴もチェック対象となります。在籍期間、雇用形態、担当していた職務内容などについて、過去の勤務先に確認を取ります。
学歴に関する情報に虚偽があれば学歴詐称、職歴について同様であれば職歴詐称として取り扱われます。

勤務態度についても確認することがあります。
勤務態度の確認はリファレンスチェックと呼ばれることもあり、応募者のかつての上司や同僚などに当時の勤務態度についてヒアリングします。
ヒアリングの対象となる人物については、応募者が指定できるのがリファレンスチェックの特徴です。

反社会的勢力との関係がないか、破産歴の有無、民事訴訟歴の有無についても確認されることがあります。
破産歴や民事訴訟歴の有無については、顧客の資産を取り扱う金融・保険業界ではかねてより厳しくチェックされていました。

最近ではインターネットで応募者について調べるケースもあります。
過去に何らかの事件を起こした者としてネット上に取り上げられていないか、SNSなどで社会人として不適切な言動を行っていないか、などの確認を入れます。

リファランスチェックとの違い

バックグラウンドチェックと似た言葉にリファレンスチェックがあります。
リファレンスチェックはバックグラウンドチェックの一部であり、両者はやや意味合いが異なります。
バックグラウンドチェックは経歴詐称の有無、自社に不利益を被る人物でないかどうかの確認であり、採用すべきでない人物を見極めるためのチェックです。
一方、リファレンスチェックは、過去に一緒に働いていた人物にコンタクトを取り、勤務態度や周囲から見た人柄などを確認するものなので、いわば自社にフィットできる人物であるかどうかの見極めといえます。

リファレンスチェックの特徴として、応募者本人が誰を対象にヒアリングするのか指定できる点が挙げられます。
この際、企業側はどのような目的で、何について確認したいのか、応募者に伝えて承諾を得てから、ヒアリング対象となる前職の上司や同僚の指定を受けます。
採用を検討する企業側にとっては応募書類や面接だけで把握できない情報を確認でき、応募者にとっては指定した前職の同僚からのバックアップを受けられるとも考えられるので、相互にメリットある行為といえます。

また、チェックを担当するのが採用を検討している企業の担当者であるのもリファレンスチェックの特徴です。
バックグラウンドチェックの場合には、専門的な調査スキルが必要となってくるため、企業は調査会社へ依頼するのが一般的であり、両者で大きく異なっている点です。

どのような方法で行う?

バックグラウンドチェックを行う際には、まず応募者の承諾を得なくてはなりません。
承諾なしに行った場合、個人情報保護の観点より問題が生じる可能性があるためです。
面接時などに口頭で承諾を取る方法の場合、後に“言った言わない”で問題になることも考えられるため、「採用における個人情報取得の同意書」などを提示して書面での同意を得るほうが無難です。
この際、バックグラウンドチェックされるのを嫌がる応募者もいるかもしれませんが、そのような応募者の多くは調べられたら困る何かしらの問題を抱えていると考えられるため、採用を見送るほうが良いといえます。

バックグラウンドチェックは基本的に調査会社へと依頼して行いますので、応募者全員を対象にすると費用が膨大になってしまうため、最終候補者に絞って行います。
企業から依頼を受けた調査会社は、独自のデータベースを利用したり、応募者の周辺の人物にヒアリングしたり、専門家ならではの調査方法で調査を進めてくれます。
調査会社との打ち合わせの際には、応募者のどういった項目について、どのように調査をするのか擦り合わせていきます。
調査会社によって料金体系は異なっており、1人あたりの料金設定となっている会社もあれば、1項目あたりの設定となっているケースもあるので、事前の情報収集は欠かせません。
項目ごとの料金設定となっている場合には、学歴については卒業証明書の提出を求め、職歴についてはリファレンスチェックを行うなど、自社で調査できる範囲の項目は自前で調査するようにするとコストを軽減できます。

個人情報の取り扱いとコンプライアンスについて社会がシビアな今日、以前の職場に連絡を取ってヒアリングしようとしても、情報を提供してくれない可能性も十分に考えられますが、本人の同意を得たうえでのバックグラウンドチェックであることを伝えます。
このタイミングで書面による同意書を提示できれば、よりスムーズに進みやすくなるので、応募者の承諾を書面で取ることはとても大切であるといえます。

調査項目についてチェックを終えたら、内容を取りまとめて、採用担当者間で共有し、採否判断のための材料とします。
調査結果については応募者本人に公開する必要はありません。

まとめ

どのような企業であっても、自身の経歴について虚偽の情報を提供する応募者は採用したくないものです。
一度採用してしまえば、その後の解雇はとても難しいので、性善説を前提とした採用活動はとてもリスクが高いといえます。
仮に、採用後に経歴の詐称が発覚したとしても、その内容によっては解雇できないケースもあります。
バックグラウンドチェックは、こういった雇用リスクを小さくするという目的のためにとても有効な方法です。
真実のみを伝えている応募者にとって、バックグラウンドチェックは自身の提供する情報の裏付けとなるため、歓迎するものとして映ります。
皆さまの会社でも、絶対に採用に失敗したくないポジションの中途採用を行うのであれば、バックグラウンドチェックを導入してみてはいかがでしょうか。