人材不足の解消の目処が不透明な状況が続いていますが、事業を動かしていくために必要な人材の確保は欠かせません。
かつてのように求人をかけて待っているだけでは採用しづらくなっているため、人材の確保を図る企業は採用を成功させるために様々な工夫を凝らしており、採用の手段も多様化しています。
そのひとつがダイレクトリクルーティングという方法です。
この記事ではダイレクトリクルーティングについて取り上げていますので、是非今後の参考としてみてください。
ダイレクトリクルーティングとは
ダイレクトリクルーティングとは、企業側から求職者に向けてアプローチを行い、採用へと結び付けていくことを指します。
似たようなワードとして、ソーシャルリクルーティングとダイレクトソーシングがあります。
ソーシャルリクルーティングはSNSなどを使った採用手法を指す言葉です。
ダイレクトソーシングはSNSや人材データベースを検索するなどして、自社の求める理想の人物像に近い人物へ直接アプローチ、スカウトを行う採用手法を指します。
つまり、ダイレクトソーシングはダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングにおけるプロセスの一部であり、ソーシャルリクルーティングはダイレクトリクルーティングの一部とも表現できます。
相対する存在が待ちの採用手法となるため、対義語となるのはブランディング採用などが該当します。
ダイレクトリクルーティングが広がった背景
もともと海外では理想像に近い人材を採用できるとしてダイレクトリクルーティングが一般的でしたが、日本でダイレクトリクルーティングが広まったのはリーマンショック以降のことです。
いち早く日本に海外のダイレクトリクルーティングを持ち込んだとされるビズリーチ社の「ビズリーチ」が登場したのが2009年です。
ダイレクトリクルーティングが広まった理由は大きく2つあり、まず一つ目は少子化です。それまでは情報誌に求人情報を掲載したり、人材紹介会社へ依頼したり、とりあえず待つのが一般的でしたが、人材不足が深刻化するのに伴い、待っているだけでは採用しづらい時代へと移り変わったためです。
次に挙げられるのがITツールの普及であり、ITツールの普及によって、個人へ直接アプローチしやすい環境となったためです。
ダイレクトリクルーティングと、従来の採用方法との違い
ダイレクトリクルーティングは企業が能動的に求職者に向けて採用のためのアプローチを行うものであり、かつて主流であった待ちの採用手法とは大きく異なります。
求人広告を掲載する求人情報誌や求人情報サイトなどの媒体はそれを見た求職者からのレスポンスを待つしかなく、応募してきた求職者から選考を行うため、採用について受け身に終始することとなります。
ダイレクトリクルーティングはそれら求人広告媒体の弱さをカバーできるものであり、理想像に近い人材にスピーディーなアプローチが可能となります。
理想像に近い人材を採用しやすくなる点については人材紹介とも共通していますが、人材紹介と大きく異なるのは採用コストを抑えられる点です。
ダイレクトリクルーティングに成功すれば社内へのコストのみで済みますが、人材紹介の場合には人材紹介会社へ支払う紹介手数料が発生します。
人材派遣も同様に派遣会社への支払いが生じるため人件費が割高となってしまいますが、自社の従業員として採用できるわけでもありません。
派遣スタッフを採用したいと思った場合には、人材紹介サービスの利用へと切り替えるなど、採用コストが二重に生じてしまいます。
理想の人物像に近い人材へ積極的なアプローチを行う点で、ダイレクトリクルーティングはヘッドハンティングやスカウトと類似しており、ネットでいくらか調べてみても、これらを混同しているケースも多く見られますが、厳密には異なっています。
ダイレクトリクルーティングは自社のリソースを活用するのに対し、ヘッドハンティングやスカウトは外部リソースを活用します。
自社が理想とする人材像に近い人物を見つけたのでアプローチをかけるのがダイレクトリクルーティングであり、理想とする人物像を転職エージェントに伝えて候補者を探してもらい、該当者が見つかってから紹介を受けるのがヘッドハンティングです。
ヘッドハンティングとスカウトの違いは、前者は基本的に転職を積極的に考えていない人物を対象とするものであり、後者は転職を希望している人物が対象となる点です。
ヘッドハンティングを引き抜きと言い換えてみれば、両者の違いを明確にイメージしやすくなります。
ダイレクトリクルーティングを導入するメリット
ダイレクトリクルーティングのメリットとしてまず挙げられるのが、採用コストを抑制できる点です。
採用に成功した場合には、求人広告掲載費や紹介手数料などの外部へのコストの支払いが生じないためです。
また、採用のターゲットとなる人材にピンポイントでアプローチできるのもメリットであり、採用コストの抑制へとつながっていきます。
採用コストには外部への金銭的な支払い以外に、採用に携わる自社のスタッフの人件費も含まれており、効率的な選考を行えるようになることで、採用スタッフの人件費に無駄が少なくなるためです。
加えて、ダイレクトリクルーティングのメリットとして見逃せないのが、潜在的な求職者へのアプローチをかけられることです。
潜在的な求職者は積極的に転職活動を行っていないことが多く、求人広告を見て応募してくる可能性も小さければ、人材紹介や人材派遣にも登録していないため、従来の採用方法では選考の対象となり得ません。
しかし、ダイレクトリクルーティングであれば自ら勧誘できるため、潜在的な転職ニーズの掘り起こしを期待できます。
そのためには求職者との密なやり取りが必要となりますが、今日のようにネットやSNSがすっかり浸透した状況下、スムーズなアプローチがしやすくなっており、自社採用サイトを設けたり、SNSを活用しながらダイレクトリクルーティングに取り組む企業も多くなっています。
ITツールを利用したアプローチは、就業中の潜在的な求職者にとって都合が良い方法であるのも魅力です。
ダイレクトリクルーティングを導入するデメリット
ダイレクトリクルーティングのデメリットは採用までの工数が多くなり、それらすべてに自社で対応しなければならないことです。
候補者の選定、送信するメッセージの作成、返信への対応、面接の日程調整などの対応にも追われますので、人材紹介会社を利用した場合に比べると、かなり手間がかかります。
このため、採用までの時間もかかりがちとなります。
工数が多い分、かかる時間も比例して多くなりますが、潜在的な求職ニーズの掘り起こしも行うため、面接にこぎつけるまでの時間も長くなってしまいます。
なかでも候補者の選定は特に難しい工程です。
自社から積極的なアプローチを行う以上、いざ面接してみて不採用とはしづらいためです。
アプローチして以降のミスマッチを避けられるよう、事前に候補者の見極めの基準を設定しておく必要があります。
候補者を絞り込みは、該当者が減ることを意味していますので、ダイレクトリクルーティングでは大量採用がしづらいのもデメリットとなります。
採用のための工数が多くなっているのを考えても、大量採用をする場合には採用スタッフの負担が大きくなってしまうので、ダイレクトリクルーティングは大量採用に不向きであるといえます。
候補者からレスポンスを得るには、それだけ自社が魅力的であることを伝えなければなりません。
しかし、いざ自社の魅力をアピールしようと思えば、そう簡単ではありませんので、やはり採用までの時間がかかってしまいがちとなります。
まとめ
ダイレクトリクルーティングは効率的な採用を実現するための手法のひとつであり、ピンポイントで採用したい人物像に近い人材の採用に結び付けられるほか、採用コストの抑制も図れます。
しかし、採用までの工数が多くなるため、採用できるまでの時間がかかりがちであり、大量採用には向いていないというデメリットもあります。
これらダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットを把握したうえで、どのような人材を確保したいのか明確化することにより、ダイレクトリクルーティングで採用を図る職種とそうでないものを区分すれば、より効率的な採用へと近付くことができます。
自社だけで導入が困難なときには、転職エージェントにアドバイスを求めてみるのもおススメです。