多様化する採用手法の中でも、理想像に近い人材の採用に成功しやすいとして、転職エージェントを介した採用は一般的なものとなっています。
しかし、転職エージェントを利用した場合にかかる費用は他の採用手法よりも割高との意見も多く、利用を躊躇っている会社も少なくありません。
この記事では、転職エージェントに費用について着目するとともに、決して割高とはいえない上手な転職エージェントの使い方についてもご紹介していきます。
費用が高い理由
転職エージェントの多くが成果報酬制を取っており、紹介された人材を採用するまでは費用がかかりません。
転職エージェントに登録している求職者は、転職エージェントがこれまで費用と手間をかけて獲得してきた人材であり、登録人材の中に求人企業のニーズに合った人物がいなければ、転職エージェントは更に費用と手間をかけながらニーズに応えられる人材の獲得に動いてくれます。
転職エージェントはただ待っているだけで求職者を獲得できるわけではありません。
通年、採用活動を行っているから、たくさんの求職者を集めることができるのであり、求人広告をはじめ多額の宣伝広告費を費やしています。
転職エージェントは紹介した人材を採用に結び付けなければ報酬を得られないため、ひとりひとりの人材に対し多くの時間を費やし、スキルや適性を把握したり、紹介先とのマッチングを上手く進められるようフォローしたり、外からでは見えづらい業務を重ねています。
それらの業務にあたる従業員の人件費をはじめ、多額のコストをひとりの人材にかけているため、それらが価格へと転嫁されているのを考えてみれば、転職エージェントを利用した場合の高額な費用について、より納得しやすくなります。
求職者はすべて無料で利用できる点を加味しても、転職エージェントがビジネスを回していくためのコストはすべて顧客となる求人企業からの手数料収入で賄われていることから、どうしても費用が高額になってしまいます。
転職エージェントの費用相場
転職エージェントを利用した場合にかかる費用の相場は、紹介者の年収の3割～3.5割が目安とされています。
500万円の場合には、150万円～175万円、700万円の場合には210万円～245万円の手数料が発生しますので、転職エージェントに支払う費用は、他の採用手法に比べて割高のように見えます。
大規模な採用を行う場合には人数あたりの費用を特別に設定したり、求職者が溢れる買い手市場となるなど景気動向によって手数料率を引き下げたり、その時々で相場はいくらか変動するものの、これらの変動は求人広告の出稿料金や求人サイトの利用料金でも生じ得るため、やはり転職エージェントの利用にかかる費用は割高であるといえます。
しかし、転職エージェントの費用を考えるにあたっては、数字だけを見て割高であると結論付けるべきではありません。
自社で採用活動を行う場合の求人広告費、求人サイトの利用料金、応募者の初期段階の選考にかかる人件費、面接会場を設けるためのコストなどをすべて転職エージェントが立て替えていると考えれば、転職エージェントの利用にかかる費用についての見方も変わってくるのではないでしょうか。
料金体系や返金規定について
転職エージェントの利用料は紹介者の年収の3割～3.5割が目安となりますが、このときに用いられる年収は理論年収によって計算されるので注意が必要です。
理論年収を算出するには、毎月の給与12か月分に加え、賞与や交通費以外の諸手当（時間外労働手当・役職手当・家族手当・住宅手当・資格手当・その他、企業が独自に実施する手当など）を加える必要があるので、毎月の給与を25万円としても賞与3ヶ月分、諸手当毎月10万円と設定すれば、理論年収は495万円となるため、理論年収について正確に理解していなければ、予想外の利用料金を請求されることになります。
高額の利用料金を支払って紹介された人材を採用したにもかかわらず、すぐに退職されてしまった場合に備えて、転職エージェントの多くは返金規定を設けています。
返金額は採用決定者が在籍していた期間によって変わるのが主流となっており、入社後1ヶ月以内に退職した場合には利用料金の80％を返還、入社後1ヶ月超3ヶ月以内に退職したときには利用料金の50％を返金するといった具合に定められています。
転職エージェントを使うタイミングやポイント
転職エージェントの利用料金は割高に見えるかもしれませんが、利用するタイミングやポイントによっては、高額の費用を支払っても割高とはいえない場合もあります。
欠員が出た際や短期間での採用をしたいとき
転職エージェントを利用することで、スピーディーな採用を実現しやすくなりますので、欠員が出た場合、短期間での採用を成功させたいときには十分、利用する価値があります。
なかなか採用できないままでいれば生産性が損なわれるだけでなく、他の従業員の負担が増し、更なる離職の原因へとつながってしまう可能性も考えられるためです。
このようなとき、豊富に紹介できる人材を抱えている転職エージェントを利用すれば、理想像に近い人材を短期間で採用でき、組織を本来あるべき状態へと戻すための近道となります。
即戦力を採用したいとき
自社で独自に即戦力を採用しようと思えば、求人広告の出稿や求人サイトの利用が主な採用手法となりますが、これらの方法によって必ず応募があるわけでなく、応募者の中に求める人材像に近い人物が含まれているとも限りません。
そのような状況が続けば、求人広告費や求人サイト利用料が積み重なり、転職エージェントを利用したほうが安上がりだったという結果にもなりかねません。
転職エージェントからの紹介人材は自社の理想像に近い人材であることが多いため、“即戦力を採用したい！”という本来の目的を達成しやすくなります。
専門職を採用しなければならないとき
専門職を担うことのできる人材の絶対数が少ないため、やみくもに募集をかけるばかりでは即戦力の人材以上に採用が難しくなりがちです。
どの媒体に求人広告を掲載すべきか、どのようなメッセージで自社に興味を引き付けるのか、提示する待遇は市場とくらべて適切であるかどうか、など採用活動の精度を高めたうえで時間とコストをかけながら応募者を待つ必要があります。
これらにかかるコストを考えると、外部コスト・内部コストともに決して安くはありませんし、採用に成功するかどうかも不透明なままです。
このようなときに転職エージェントを利用すれば、抱えている課題はいずれもクリアとなります。
採用にかける工数がないとき
採用に成功するまでには、募集から応募者の選考を経て内定を出すなどのステップがあり、それぞれにいくつもの工数が要求されますが、それらの工数をこなすには自社の採用担当者が時間と労力を割かねばならず、常にコストが発生している状況です。
このため、企業によっては採用に工数をかけていられない場合も少なくありません。
このようなときに転職エージェントを利用すると、まるで採用活動そのものをアウトソースしたかのような状況を作り出せます。
しかも、採用を決定するまではコストが発生しないため、より好ましい採用活動を実現できます。
まとめ
転職エージェントを利用した際にかかる費用は他の採用手法に比べて割高のように映りますが、採用に成功するまでにかかるコストをトータルで考えたとき、実はそれほど割高ではないことに気付かされます。
早期に採用しなければならないとき、即戦力として活躍できる人材や専門的な人材を採用したいときなど、採用の難易度が高いほど転職エージェントの利用は割安となってきますので、シーンに合わせて利用するのが上手な転職エージェントの活用方法です。
転職エージェントを利用する最大のメリットは、費用が発生したときには必ず採用に成功しているという点に他なりません。
採用という本来の目的を叶えるために、転職エージェントに支払う費用が適正な範囲であるかどうか、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。