商取引や事業投資など幅広いビジネスを展開する商社は“7大商社”に代表されるよう、高い給与と安定性が備わっていたり、海外勤務のチャンスがあったりするため、転職先として高い人気を誇っています。
この記事では商社の経理の仕事について紹介しつつ、海外勤務のチャンスの有無、求められている人物像など、商社の経理へと転職を希望する際に知っておくと便利な情報を記載していきますので、是非今後の参考にしてみてください。
商社の経理の仕事内容
商社の経理は「コーポレート経理」と「事業部経理」の2つに大別されます。
コーポレート経理は会社全体として行う経理業務のことであり、具体的な仕事内容として国際会計基準に合わせた連結決算や財務諸表作成、監査法人対応、内部監査、全社の予算管理、税務申告や税務調査対応、資金戦略の企画・立案などが挙げられます。
総合商社の場合には多くの連結子会社を持っているほか、国際会計基準が適用されているため、決算業務に関わるにはハイレベルなスキルが要求されます。
担当者数も多く、業務が細分化されているので、所属する担当者は各々の分野のスペシャリストとして活躍しています。
事業部経理の仕事内容は日常の会計処理や資金調達、監査法人対応、税務調査対応、関連子会社の経理支援・指導などが挙げられます。
企業規模が大きくなるほど事業部ごとに独立採算制を取っているケースが多くなり、それぞれの事業部で経理を独自に行うようになります。
事業部経理の担当者数はコーポレート経理に比べて人数が少ないので、ひとりの担当者が担う業務が幅広いのが特徴です。
商社の経理担当者として会計士が勤めている場合も少なくありません。
コーポレート経理や事業部経理を担うだけでなく、会計士の専門性を活かして経営企画などの部門でM&A案件に携わるケースもあります。
M&A案件では情報収集や企業価値の算定、あるいは投資スキーム構築やDD、PMIなどの支援などを担当します。
商社の経理に転職後、海外駐在は可能か
大きな商社であれば当たり前のように海外に現地法人を持っているため、現地に合わせた経理を行っています。
それらを担当するスタッフは現地の人材が主となりますが、現地スタッフ任せにするのではなく、海外駐在員として日本人の経理担当者を赴任させ、その現地法人の経理のマネジメントを行っているケースが多く見られます。
経理は企業にとって重要な経営資源となるお金をマネジメントする機能であり、現地法人の経営の安定を図る目的もあるためです。
このような背景より、経理は海外駐在のチャンスが他のバックオフィス職種に比べて多いといえます。
海外駐在となればより高い収入を期待できるほか、先々のキャリアアップにも役立てられるなどのメリットがある一方、駐在するために特別な資格も不要なので、海外駐在を希望する経理スタッフはとても多く存在しています。
ライバルが多い以上、海外駐在のチャンスを得るのはそう簡単ではありません。
現地の経理チームのリーダーとして経理機能をマネジメントしなくてはならないので、支障なく業務をこなすだけのスキルを求められます。
現地の経理をマネジメントする立場とは、現地法人のお金周りについて任されることを意味しており、それだけの信用を得ている必要もあるので、まずは国内でしっかりと経験を積みながら自分への信用を蓄積することを優先すべきといえます。
その過程において、先々に備えて言語の習得にも力を入れていくのもおススメです。
商社の経理は激務?残業時間の目安はどのくらい?
商社といえば忙しいイメージを思い浮かべがちですが、残業時間は会社によって異なっており、月平均15~20時間程度の企業もあれば、30~40時間程度の企業もあるなど、一概に激務であるとはいえません。
商社に限らず、経理の仕事の特性として繁忙期・閑散期があるので、比較的メリハリをつけやすい就業環境です。
繁忙期・閑散期は年次業務のスケジュールによって決まることが多く、3月末決算の企業であれば決算や税務申告に追われる3月~5月、社会保険や労働保険などの事務手続きの期限が到来する7月、年末調整の対応を行う12月~1月にかけて繁忙期となります。
働き方改革やワークライフバランスについて社会が関心を寄せる状況下、企業規模の大きな商社は模範的役割も担わなくてはならず、積極的に残業を推進するわけにはいかないので、かつてのように商社イコール激務であるとはいえません。
経理という職種上、海外との取引のために昼夜逆転させなくてはならないということもありません。
繁忙期と閑散期を意識しながら月次業務のスケジュールをスムーズにこなせるよう準備しておくことで、余裕を持ちながら働きやすくなります。
商社の経理に転職したい!転職で求められるものとは
高い収入や将来の安定性はもちろん、海外赴任できるチャンスも備えている総合商社は多くの人々にとって魅力的な就業先として映るため、求人には多くの応募が集まりやすく、自ずと採用基準を満たすのに求められるハードルは高くなりがちです。
これまでのキャリアが一般的に魅力的であると評価される人材であっても、選考プロセスを通過するのに苦戦を強いられてしまいます。
決算業務の経験、IFRSの知識または経験、公認会計士資格または日商簿記1級をはじめとする難関資格、ビジネスレベルの英語力などハイレベルなスキルが求められますが、これらのなかで総合商社の経理に転職する際により優位なスキルといえるのが公認会計士の資格取得者です。
公認会計士であればコーポレート経理や事業部経理の担当者としての活躍を期待できるだけでなく、M&A案件においても専門性を発揮してくれると評価されやすいためです。
このように総合商社の経理への転職はかなり難しいといえますが、総合商社以外の商社などでは、他の事業会社と大きく変わらない応募条件になっているケースが多いので、商社の経理としてキャリアを積んでいきたいと考えている方には、より現実的な転職先であるといえます。
募集されているポジションによって求められる知識・経験に差はあるものの、日商簿記2級や経理の実務経験などを求めている一般的な経理求人であるケースも少なくありません。
商社という枠組みの中でも、大規模な商社と中小規模の商社では経理組織の規模も異なり、入社後のキャリアパスも異なります。
経理業務が細分化されており、その中のひとつの業務についてプロフェッショナルとして成長していくのが大規模な商社の経理担当者のキャリア形成の特徴である一方、中小規模の商社ではひとりの担当者が幅広い業務を担当していくため、より広範なスキルを身に付けやすく、経理担当者としての成長を図ることのできる場であるともいえます。
幅広いスキルを持つ経理担当者は転職市場から高い評価を受けやすくなるので、現状では難しい総合商社の経理への転職の道が開ける可能性もあれば、より魅力的な中小規模の商社からのオファーも受けやすくなります。
希望するキャリアに近づくためにはどのような企業への転職を目指すべきか、自分で判断しづらいときには転職エージェントなどに相談するとよいでしょう。
転職エージェントはこれまで多数のキャリアパスを見守ってきた経験があるだけでなく、その人物の持つキャリアイメージに沿った求人案件を取り扱っている可能性もあるためです。
まとめ
商社の経理担当者としてキャリアを積み重ねていくためには、まずどのような企業に入るのか、自分に合った選択をしなくてはなりません。
本来であれば総合商社からも採用されるだけのスキルを持っているのに遠回りをしてしまったり、現状では総合商社の採用基準を満たしていないのに、ずっと総合商社ばかりにこだわっていたりすれば、思い描くキャリアパスを描けないままとなってしまいます。
商社の経理へと転職する場合、その商社がどのような人物像を求めているのか、入社すればどのような業務を担うのかなど、求人を眺めるだけでは見えてこない情報が少なくありません。
より明確なビジョンを応募前に知りたいときには、是非転職エージェントを活用してみてください。
転職エージェントは皆さまの転職活動を親身になってサポートしてくれる心強い存在となります。