中小企業の経理に転職するには?大企業と何が違うの?

企業規模を問わず、どのような会社にも経理機能は必要なので、経理担当者として転職を検討する際の選択肢は多々あります。
なかでも中小企業で働いたほうがいいのか、大企業で働くべきなのかは大きな分かれ道となります。
この記事では中小企業と大企業それぞれの経理業務の特徴についてご紹介していくとともに、中小企業で経理担当者として働く場合、どのようなスケジュールで動いていくのかも取り上げていきますので、今後の参考にしてみてください。

中小企業の経理の特徴

経理の人員が少ない

中小企業と大企業では従業員数が大きく異なっており、中小企業の場合には限られた人数で経理業務を回さなくてはなりません。
経理は直接的に利益を生み出さないバックオフィス部門であり、大企業ほど資金面で余裕を持てない中小企業では雇うことのできる従業員数がどうしても限られてしまうため、バックオフィス部門が手薄となりがちです。

また、少人数で経理業務をこなさなくてはならないので、それぞれが担当する業務の範囲が広いのも特徴です。
大企業の場合には経理担当者の数に余裕があるので経理業務を細分化してそれぞれに割り当てたり、会計ソフトを導入して業務の効率化を図ったりしている一方、資金面で余裕を持てない中小企業では同じようにはできません。
このため、欠員が出たときに業務が回らなくなるリスクが高くなります。
担当する業務の範囲はそれぞれの企業にもよって異なりますが、企業規模が小さくなればなるほど、経理以外の業務も兼任しがちとなります。

中小企業会計要領の導入で経理作業を効率的にする

業務効率化を積極的に図ることのできるだけの経営体力のある大企業とは異なり、中小企業の場合には経理担当者の負担がどうしても大きくなってしまいがちです。
こうした状況の改善に役立つのが、「中小企業の会計に関する基本要領」です。
この要領は中小企業庁が中小企業の経理業務円滑化を図るために、中小企業の経営実態を取り入れながら作成したものなので、経理業務がよりスムーズになると期待できます。
公的に作成されたガイドラインなので、この要領に沿って経理業務を行うようにすると、金融機関からの評価が上がる可能性もあります。

中小企業の経理業務

中小企業の経理業務は日常業務、月次業務、年次業務の3つに分けられます。

日常業務は現金出納管理、伝票管理、会計帳簿の記帳、仕入・売上の管理、請求書の発行、入金確認、預金管理などが挙げられます。

月次業務として挙げられるのは、経費精算、月次決算、給与計算、税金や保険料の計算・納付があります。

年次業務としては、年次決算、年末調整、税金計算と納付、償却資産の申告、棚卸などがあります。

中小企業の経理業務内容自体は大企業とほぼ変わりませんが、ひとりひとりの経理担当者が上記の業務について幅広く対応している点で大企業と異なります。
加えて、どの業務を会計事務所や社会保険労務士などにアウトソーシングできるのかによって、担当しなければならない業務範囲が異なってくるため、中小企業同士においても経理業務の内容は違ってきます。

また、企業規模が小さくなるほど、月次決算を組まない企業が多くなったり、経費精算が月次業務でなく日時業務に取り入れられたりするなど、経理業務の内容が狭くなるケースも少なくありません。

大企業の経理業務との違い

大企業は経理業務が細分化されており、出納・主計・財務それぞれ独立した部署となっており、その部署ごとに専任の担当者が存在しています。
大きな金額の取引も頻繁に行われる大企業では、それぞれの取引が適切に行われるよう分業としたほうが、管理が行き届きやすいからです。

また、部署ごとに専任の担当者を設けることで、ミスをできるだけ減らせるのも分業となっている理由です。
担当する業務範囲が狭く、それらを専門と取り扱うことでその分野のプロフェッショナルが育ちやすいためです。
したがって、自分の担当範囲をはずれてしまえば、一般的に経理業務とされている仕事について十分な知識や経験が備わっていないケースが珍しくないのも大企業の経理担当者の特徴です。

経理に十分な担当者数を割きづらい中小企業では、出納・主計・財務をひとつの部署で取り扱っていることが多く、企業によっては一人の経理担当者がすべて担っている場合もあります。
担当する業務範囲が広い中小企業の経理として働くのは、広範な経理の知識やスキルを身に付けられるため、経理のプロフェッショナルへの近道であるという声も少なくありません。

中小企業の経理業務の流れ

中小企業の1ヶ月の経理業務の流れを簡単にご紹介していきます。
月初め、月中旬、月末の3つに分けると、それぞれのタイミングで決まった業務が発生することがわかります。

月初め

月末払いとなっている取引が多いため、月初めにはまず入金確認を行い、領収証が必要である場合には発行するための事務処理も発生します。
また、前月分の売上や経費などお金の出入りが〆られるため、月次決算に反映させるための金額を調べてまとめます。
経費精算が月次業務となっている企業の場合には、前月分の精算すべき経費の金額もまとまっているため、月初めに経費精算を行います。

月中旬

月中旬は住民税、源泉所得税の納付を行います。
これらの税金は原則として給与支払月の翌月10日までに納付することとなっているためです。
月中旬は比較的落ち着いた時間となりがちなので、慌ただしくなってくる月末に向けた準備を月中旬から進めていくケースも少なくありません。

月末

月末は月次業務がもっとも集中する時期となるため、経理担当者にとって忙しい時期となります。
まずは給与計算があります。社員に支給する給与の計算を行いますが、給与体系も多様化している今日、給与計算が複雑になっている場合もあります。
次に、取引先への支払いも行わなくてはなりません。
末払いで受け取っている請求書をはじめ、かかった諸費用の精算を済ませます。
加えて、翌月に取引先から入金してもらうための請求書を発行したり、天引きしている社会保険料を納付したりするなどの業務も発生します。

このような流れが中小企業の経理業務の一ヶ月の流れの目安となりますが、これらの業務に日常業務や年次業務が加わってきますので、必ずしも月次業務の少ない月中旬が暇な時期であるとは限りません。
給与支払日は企業によって異なっており、社会保険料は口座からの自動引き落としとなっている場合もあるため、月末に集中する業務の負担がそれほど重くないケースもあります。

中小企業の経理に転職した事例

Aさん・40代後半

大企業で経理担当者としてキャリアを積み、中小企業の経理へと転職。
大企業では財務諸表の作成、税務申告書の作成、有価証券報告書の作成を行っていたが、転職後は出納業務、資金調達、資金繰りや 経営企画室の業務である、予算の作成や中期経営計画の作成など幅広い業務を担当するようになりました。
年収は900万円から700万円へとダウンしたものの、全体を見ながら経理業務を進めていくことができるため、大企業にいたとき以上のやりがいを覚えています。

まとめ

中小企業と大企業の経理にはそれぞれの良さがあります。
中小企業で経理担当者としてキャリアを積めば、大企業にいる以上に短期間で幅広いスキルや知識を身に付けられると期待できます。
ひとりひとりの担当する業務範囲が広く、大企業のように会計ソフトを導入するなどの効率化もできていない企業も少なくありませんので忙しい時期もあるかもしれませんが、月次業務の流れをイメージしながらちょっとスケジュールに工夫を加えてみるだけでも、繁忙期の調整がしやすくなりますので、自分に無理なく働きやすい環境となります。
これから経理のプロフェッショナルを目指すのであれば、中小企業で幅広い業務を担える人材への成長を図ってみてはいかがでしょうか。