会計事務所で働く場合の年収について、皆さまはどういったイメージをお持ちでしょうか。
インターネットで検索しようと「会計事務所 年収」といった具合に入力してみると、すぐに「安い」、「低い」といったサジェストが表示されるなど、あまり良いイメージはないようです。
こうなると会計事務所に転職したいと思っていても、なかなか足を踏み出しづらくなってしまいます。
この記事では会計事務所の年収について詳しく取り上げていきますので、是非今後の参考にしてみてください。
会計事務所の職種ごとの年収
会計事務所では公認会計士、税理士といった有資格者に限らず、様々な職種の人が働いており、同じ事務所に勤務する同世代の人同士の年収も職種と取得している資格によって大きな開きが生じます。
以下では、会計事務所の職種を公認会計士・税理士・税理士補助・事務スタッフの4つに大きく分けて、それぞれの職種についての年収目安を解説していきます。
公認会計士の年収
公認会計士になるには公認会計士試験に合格する必要があります。
試験では短答式試験4科目、論文式試験6科目を一度に受験しなくてはならず、合格率は10%に満たない年度もあります。
公認会計士になるには試験に合格するだけでなく、登録要件に実務経験が必須となっているため、まずは監査法人に就職してキャリアを積み重ねていくことになります。
2年間の業務補助、3年間の実務補習が登録要件となっているので、公認会計士として登録するまでにかかる期間は早くても試験に合格してから3年かかる計算になります。
このように険しい道のりを抜けてきた公認会計士の年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると平均1,000万円弱となっています。
平均年収の男女間格差はほぼありません。
調査対象者の平均勤続年数は男女ともに10年ほどとなっているのを含めると、女性にとっても働きやすい職種であるといえます。
税理士の年収
税理士も難関資格のひとつであり、年度によってバラつきがあるものの15~20%ほどの合格率で推移しています。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、企業で賃金報酬を得て働いている税理士の平均年収はおよそ900万円となっていますが、この統計では社員税理士と所属税理士との区別がされていません。
税理士が勤務して給与を得るには共同経営者として役員待遇で働く社員税理士、給与所得を得ながら雇われて働く所属税理士の2パターンに大きく分けられます。
日本税理士会連合会の税理士実態調査報告書によると、社員税理士の全国平均の年収は900万円弱、所属税理士の平均年収は600万円弱となっており、かなり大きな格差があります。
税理士補助の年収
税理士補助は税務代理、税務書類の作成、税務相談といった税理士の業務を補助する職種であり、基本的に税理士資格を取得しておらず、会計スタッフや税務アシスタントといった職名で勤務しています。
会計事務所スタッフ、税理士事務所の一般スタッフの年収目安の全国平均は500万円前後となっています。
公認会計士や税理士の年収は地域間格差がそれほど目立ちませんが、税理士補助や事務スタッフのように資格を取得していない職種では、事務所の所在地が東京と地方とで大きく年収が異なってくる点には注意が必要です。
事務スタッフの平均年収
事務スタッフは税理士補助と同様に、その事務所の所在地や規模によって年収が上下しがちですが、未経験者の場合には250万円ほどからスタートし、経験者となれば300~350万円ほどが平均的な年収目安となります。
月次決算・巡回・年次決算・税務申告などの業務を担えるようになれば、無資格でも400万円近くの年収を得られるケースもあります。
会計事務所の年収が安いと思われる理由
会計事務所で働いている人の年収はどのポジションで働いているかという点が大きく影響しています。
しかし、資格を取得していない税理士補助や事務スタッフの場合でも、決して年収が安いとは言い切れません。
国税庁による民間給与実態調査によると日本人の平均年収は450万円ほどであり、他の統計において事務職の平均年収は350万円ほどとなっているのと比較してみれば、会計事務所で働く税理士補助や事務スタッフの年収のほうが上回っていると考えられるためです。
では、なぜ会計事務所の年収についてネットで調べようとすると、「安い」、「低い」といったサジェストが目立つのかといえば、それだけ無資格で年収が低めの人が多いためであり、そういった大勢の声がネット上に寄せられることで“会計事務所の年収は安い”という考えが多数派の意見として映ってしまうからに他なりません。
加えて、会計事務所では非正規雇用の社員も多いため、余計に年収についてネガティブな意見が集まりやすい環境となっています。
しかし、会計事務所ではポジションが上がっていくほど年収が上がっていくのですから、キャリアを重ねて資格を取得していくことで年収アップを見込めます。
有資格者ほど高年収となりやすいのを目の当たりにし、資格取得のための知識は業務を通じて身に付けられるのですから、自分の努力次第で高年収を実現しやすいのが会計事務所で働くことの魅力であるともいえます。
会計事務所で年収を上げるには?
会計事務所で年収アップを実現するためには、まず自分のスキルをアップさせることが不可欠です。
無資格であったとしても月次決算・巡回・年次決算・税務申告などの業務をこなせるようになれば、その能力に見合った年収を得やすくなります。
会計に関する専門的な知識の掘り下げのみならず、英語を仕事に使用する事務所であれば語学力が評価されて年収増といったケースも期待できます。
より確実に年収アップを図りたいときには、やはり資格の取得が近道となります。
スキルを評価する以上に資格は客観的な判断材料となるほか、勤務先によっては資格手当なども期待できるからです。
税理士や公認会計士といった専門性の高い難関資格に限らず、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、社会保険労務士といった資格も年収アップへと直結しやすいといえます。
これらの資格は税理士や公認会計士に比べると取得しやすいのに加え、いざというときには独立開業も視野に入れることができますので、年収アップという目的のための資格取得の勉強においてもモチベーションを維持しやすくなります。
また、平均給与の高い職場に転職するのも年収アップを図るには有効な手段です。
一般企業でもそうであるように、個人事務所や小規模事務所はどうしても年収が低い傾向にありますし、給与規定や評価制度が整備されていないことも多く、市場での人材価値に見合った評価を得られていないケースも少なくありません。
こういったときには職場を変えてみるだけでも年収アップを期待できます。
転職で年収アップ!会計事務所の転職成功例
会計事務所への転職によって年収アップした実例を2つご紹介します。
①Mさん(49歳 女性)
資格:税理士2科目合格(簿記論 財務諸表論)
転職前:中堅会計事務所 年収400万円
転職後:外資系特化型事務所 年収450万円
②Nさん(29歳・男性) 資格:なし
転職前:事業会社 年収250万円
転職後:個人会計事務所 年収300万円
お二方とも、税理士や公認会計士といった難関資格を取得していなくても50万円近くの年収アップに成功しています。
まとめ
会計事務所の年収についてネガティブな見方が多いのは、無資格であったり、非正規雇用の社員が多かったり、といった事情が深く影響しています。
しかし、一般的な年収の平均値と税理士補助や事務スタッフとして会計事務所に勤務している人たちとの格差はさほど見られませんので、年収についてはさほどナーバスになる必要はありません。
むしろ資格取得のための知識習得に理想的な環境であり、資格取得や実務経験の積み重ねを経ていくことで、より高額の年収を期待できる点に着目すべきです。
会計事務所への転職をご検討されているようであれば、まずは会計事務所でのキャリアプランに精通している転職エージェントに相談してみると、より精度の高い転職活動を実現しやすくなります。