スタートアップ企業とは、ただ設立間もない会社を指す言葉ではなく、誰も考えつかないだろう斬新なアイデアを持って新たなビジネスモデルを構築し、短期間での急成長を図る会社のことを指します。
このため、スタートアップ企業で働くことは常に新しい刺激を得られるため、とても大きなやりがいを得ることができますが、一方で就業におけるリスクも存在しています。
この記事では人事としてスタートアップ企業に転職する場合のメリットや注意点についてご紹介していきます。
スタートアップの人事の仕事とは
人事の仕事を大きく分けると、採用、労務、教育、人事制度の4つがあります。
ビジネスを拡大させていくために必要な人材を採用し、スキルを実務にフィットさせるための教育研修を行い、安心して就業できる環境づくりに努めながら、仕事へのモチベーションを高めることのできる人事制度を整備するのが人事の仕事です。
これまで、これらの人事の仕事を重ねてきている企業であれば、それまでの基盤をもとにブラッシュアップすることもできますが、スタートアップ企業の場合には前例がない状態なので、すべての人事業務をゼロベースから構築していく必要があります。
採用においては、これまで採用したことがないのですから、採用計画の立案からスタートします。
どのような人材が必要であるのかヒアリングしつつ、ペルソナを定めたり、選考スケジュールを決めたり、ひとつひとつ進めていかなくてはなりません。
労務においては社会保険手続き、給与計算、勤怠管理のみならず、就業規則の策定から取りかからなくてはなりませんし、教育研修も新たな企画として取り組む必要があります。
また、人事制度もそれまで存在していないので、整備するのではなく構築しなくてはなりません。
スタートアップ企業は売上の拡大を優先させるため、バックオフィスがどうしても手薄となりがちです。
バックオフィス業務は人事の他にも経理や総務、庶務や広報など多岐にわたりますが、社内に十分なバックオフィス人材が所属していない状況下、ひとりの従業員が複数の業務を担うケースも珍しくありません。
このため、人事として入社していても、総務や庶務の仕事を担当しなければならない可能性も十分に考えられます。
スタートアップへの転職は不安を感じる人も多い
スタートアップ企業は短期間で急成長することを前提としています。
そのような組織に身を置くことは、新しい刺激を受けながら自分自身の成長を図ることも期待できるので、とても魅力的ですが、スタートアップ企業に転職することに不安を覚える人も多数います。
やりがいの大きな仕事には責任が付いて回るので、ひとつひとつの業務をこなしていくために覚える負荷やプレッシャーが大きく、これらが不安を抱かせることにつながってしまうからです。
スタートアップ企業での人事をはじめとするバックオフィス業務はそれぞれ未整備なままであり、自ら率先して新たなものを作っていかなくてはなりません。
言い換えれば、自分から仕事を作っていくスタイルで業務に向き合うことを要求されます。
一般的な企業であれば、前例に従いながらブラッシュアップするよう業務に取り組むこともできますが、スタートアップ企業の場合にはこれはできません。
また、スタートアップ企業だからといって、必ず短期間で成長できるわけではないので、安定性に欠けているのも不安材料となります。
新たなチャレンジを行っている以上、すぐ傍らには失敗も付きまとっているため、上手くいかなければすぐに倒産してしまう可能性もあります。
スタートアップ人事として転職するメリット
スタートアップ企業に人事として転職するメリットは大きく3つあります。
会社の基盤づくりができる
既に基盤ができている会社に入社するのが一般的ですが、スタートアップ企業の場合には未整備な組織へと入っていくため、自分が会社の基盤づくりに参加できるというメリットがあります。
会社の基盤づくりに携わることができるのは、創業間もない会社へ入社する以外の方法は基本的にないので、とても貴重な経験を積むことができます。
スタートアップ企業は急成長を目的としているので、次々と変化する経営環境に沿ったフレキシブルな基盤づくりを体感できます。
小規模で未整備な分、幅広い経験を積み成長できる
スタートアップ企業はバックオフィスが手薄であることが多く、人材の数も十分に揃っていません。
このため、担当する業務範囲が広くなるのに伴い、幅広い経験を積むことが期待できます。
採用、労務、教育、人事制度のすべてが未整備である状況下、自らこれらの基礎となる部分から組み立てていくことができるのは、スタートアップ企業でしかできない経験であるといっても過言ではなく、自分の成長にも直結しますので、自らの人材価値の向上も図ることができます。
個人の裁量が大きく経営に深く関わることができる
人事はヒト・モノ・カネ・情報といった重要な経営資源のひとつであるヒトをマネジメントするプロフェッショナルであり、少人数の組織において自分が主体となって業務に邁進する性質上、個人に与えられる裁量が大きくなります。
この結果、経営に深く関わることができるのもメリットのひとつに他なりません。
人事は経営者の近くで仕事をするケースも多いため、スタートアップ企業で経営の舵を取る経営者のノウハウをすぐ近くで見る機会に恵まれる可能性があるのも、スタートアップ企業の人事として働くことの魅力といえます。
後悔しないために!スタートアップへの転職時に注意すべきこととは
スタートアップ企業への転職は、新たな刺激を受け続けることで自身の成長も図ることができる点でとても魅力的ですが、安定性に欠けているので、転職時に注意すべき点もいくつかあります。
まずは給与や就業条件をしっかり確認することです。
スタートアップ企業は規模が小さく、少数精鋭で業務をこなしていくため、仕事が忙しい日々が続くことも少なくありません。
加えて、急成長を実現させていないフェーズにおいては、それほど高い給与を出せるわけでもありません。
こういった状況下でも、自分がモチベーションを保ちながら働いていけるかどうかについて熟慮する必要があります。
仕事が忙しいのに、給与が十分でない場合でもその仕事に対するモチベーションを保つのに必要なのは、会社のビジョン、ミッション、バリューへの共感です。
このため、入社を決める前に、会社の方向性をしっかり聞き、自分がコミットできそうかどうかを冷静に判断する必要があります。
入社後、どのように働いていくのか、働き方についてチェックするのも重要です。
企業にもよりますが、業務時間はフレックスであり、リモートワークでも就業可能、スーツを着用する必要がないといったスタートアップ企業が多くあります。
福利厚生面においても、ジムや仮眠スペースなどの設備が整っていたり、フリーフードがあったりと、一般的な企業ではあまり見られない魅力を持っていることも少なくありません。
スタートアップ企業がこれだけ働きやすい環境づくりに融通を利かせているのは、多忙なスケジュールに追われがちとなり、ワークライフバランスが取りづらい状況をできるだけ改善させようとしているためです。
給与、ワークライフバランスなど自分が仕事をしていく上で重視すべきものを振り返り、想定できるデメリットがスタートアップ企業での就業から得られるものとトレードオフできるかどうか検討することが大切です。
まとめ
すべてが未整備であるスタートアップ企業での人事を担当することは、人事の仕事を幅広く経験できるので、人事のスペシャリストへと成長するための貴重な経験を積むことができます。
大きな裁量を与えられ、自分が主体となって業務に取り組み、新しいものを創り上げていく日々はとても大きなやりがいを感じられるでしょう。
反面、スタートアップ企業ならではの忙しさ、将来の不透明感といったデメリットもあります。
自分のキャリアパスを確認しつつ、スタートアップ企業での就業が先々にメリットをもたらすものであるかどうか検討するなどして、今後のキャリアの選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。